2012年11月27日
・「今日は気分がいいんだ」
・「そろそろ躁鬱病を疑え」
・ぼくの部屋で、ぼくと極楽鳥はブラックニッカを飲んでいた。珍しく、今日はぼくから鳥に連絡をした。
・「ぼくから話すなら聞いてくれるって言っただろう」
・「言わなきゃよかったな」
・「付き合えってくれよ。おごるから」
・「ブラックニッカでおごるからって、せめてジャックダニエルくらい持ってこいよ」
・文句をたれつつ鳥は付き合ってくれた。
・ぼくは鳥に、「ぼくは、こんなに弱くて情けない人間だったんだろうか」と訊いてみた。
・「弱いのは間違いねえな」
・鳥はドライに言った。
・「けど情けないかは知らねえ。おまえくらいの弱さは多分だれでも持ってんじゃねえの。だから少なくとも、それを引け目に感じたりする必要はないんじゃねえんだ?」
・「それは鳥も?」
・「俺は鳥だから知らねえ」
・鳥は左の翼をばっさばさとさせた。
・「ただな、引け目に感じたりすることはないが、てめえの弱さを恥じなくなったらそいつは終わりだ。乗り越えられなくても、消せなくても、それでも弱さってのは隠すべきだ。恥じるべきだ。けっして、晒すもんじゃない」
・ぼくは黙ってうなずいた。
・鳥はぼくから視線を外してタバコを吸った。
・「おまえは自分で自覚してる以上に鈍臭くて成長が遅いだけだよ。ここまで来たら取り返しがつかないものが多いんだから、開き直って自分のペースでやれや」
・「ああ……」
・ぼくはウィスキーをすすり、それでもなんだか涙がこぼれそうでタバコを咥えて火を点けた。
・「ありがとう」
・「うるせー、もっと酒もってこいや」